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国際数学オリンピック ルーマニア大会
銀メダリスト 斎藤 新悟 君 へのインタビュー
(1999年7月)

以下は,1999年7月の国際数学オリンピック,ルーマニア大会から,見事銀メダルを取って帰ってきた斎藤新悟君(当時高3Gクラス在籍,灘高3年)に行ったインタビューです。

この年の数学オリンピックの内幕や代表選手の人柄,また斎藤君の数学の勉強方法などを語ってもらいました。

(インタビュアー:k.s)


斎藤君,よろしく。

「よろしく。」

■ 日本人選手の得点は6名中4名が各メダルのボーダー上

さて,今年のIMO(「いも」ではありません。international mathematical olympiad の略)は7月下旬にルーマニアで開かれたわけですが,よく知らないひとも多いので,その概要からいきましょう。

まず,参加国と参加人数は?

「えーと,81ヶ国で450人です,確か。」
日本代表は何人でしたか?
「6人です。国によっては1人とか2人とかいうところもありました。」
試験の形式は?
「4時間半で3問というテストが2日連続でありました。配点は1問7点で計6問ですから42点満点ですね。」
斎藤君は銀メダルを取ったわけですが,メダルはどうやって決まるのですか?
「全体の1/12が金,2/12が銀,3/12が銅,という振り分けになるように点数で決められます。今年は,金が28点以上,銀が19点以上,銅が12点以上でした。」
他の日本人選手の成績は?
「僕も合わせて,金が2名,銀が4名です。」
代表選手6名全員が銀メダル以上を取ったわけですね。これは最近でもかなりいい成績だと思うのですが,日本の国としての順位は13位と例年並みですね。これはどういうことですか?
「それは,日本人選手の得点が各メダルのボーダー付近だったからです。具体的には,金2名が30点と28点,銀4名が20点と,19点が3名でした。」
なるほど,本当にボーダーの人が4人もいますね。ちなみに斎藤君は?
「20点です。」
ということは,日本代表の中では3位ということですね。世界では・・・大体100位に入っているじゃないですか。ランキング入りですね。(なんのことだか?)

■ ジョークで決まった得点

さて,将来IMOに出る人のために,IMOのテストの特徴なんかを聞かせてください。
「そうですね。まず,解答用紙は計算用紙との区別がありません。A4の紙を30枚渡されて,それに計算や解答をわーっと書いて各問題ごとに封筒に入れて提出します。」
30枚というのは1日分ですか。
「そうです。足りなければいくらでももらえます。」
普通でいうと,1回のテストの解答用紙が30枚というのは驚きものですが,斎藤君は,1日目は30枚のうちどれくらい使いましたか?
「ほとんど使い切りました。追加はしませんでしたが。」
しかし,計算用紙と解答用紙が同じ用紙ということは,答案の清書なんかはしないんですか?
「しません。普通の答案でいう,『下書き』の状態で提出という感じです」
計算や実験,そして証明の下書きや結論がごちゃごちゃに書いてあると,おまけにそれが一人分何十枚となると,私も仕事柄,ついつい 採点が大変だと心配してしまいますが,その辺は何か聞いてますか?
「間違ったことが書いてあっても,それは計算,下書きとみなして減点しないそうです。採点者といっても,それぞれの国のスタッフが自分の国の分を採点するので,必死になって,合っている記述を探し出し得点にしようとするわけです。後で,開催国側のスタッフとで,最終的な得点を各答案について話し合いで決めます。」
といっても,開催国側の人が,たとえば日本人選手の答案なんかは読めないでしょ?
「ええ,だから,日本人のスタッフが,『ここにはこう書いてある,だからここで何点だ』なんて説明しながら決めるそうです。」
ということは,スタッフに押しの強いひとがいたら,自国の得点を結構引き上げられるんじゃないですか?
「そうですね。特に今年の開催国のルーマニアは甘かったらしいです。」
というと?
「今回,ある日本選手の答案について,0点か1点かという議論になったらしいんですね。そこで,日本側のスタッフが冗談で『ハーフ!』と言うと,ルーマニア側のスタッフの一人が『私もハーフ』と言いだして,さらにその人が『あなたのハーフと私のハーフを足して1点ですな』と。この冗談で,結局その答案は1点になっちゃった。」
んー,見事な大岡裁きですね。

■ 代表選手が数学の定期テストで赤点?

  斎藤君は3年前からオリンピックに参加し始めたのでしたっけ。
「そうです。中3のときは予選は通ったけど国内の本選で落ちました。高1のときは,その本選は通ったけど最後の代表合宿での6名選抜に 漏れました。そして,高2の3回目で代表になって,今回行って来ました。」
というと,まあ,オリンピックの常連みたいな人たちともずいぶん親交があると思いますが,みんなどのくらい勉強してますか?
「それは,ホントに色々というかピンキリです。たとえば,昨年代表になった当時中3のO君なんかは最先端の勉強までしてそうです。詳しくは僕もわからないんですけど,専門は数論っていってましたから。」
中学生で,専門が数論?(笑)もう大学の勉強も終わって,研究してるってことですか。冗談にしか聞こえませんが,ホントなんでしょうねえ。まさに,紙と鉛筆さえあれば研究できる数学ならではの話ですね。
「でも,今年はオリンピックには出ていないんですよ。」
どうして?
「高校受験があるからって。」(爆笑)
今更,勉強はほとんどいらないでしょ。
「いや,どうも入試日程が重なっていたんじゃないかって話です。」
なるほど。では逆に,代表でありながら,あまり勉強していない人っていますか?
「います。これは高3のひとなんですが,この間,学校の定期テストの数学で赤点だったっていってました。」
どういうことですか?
「オリンピックって,一応,知識は高2の数学までしか必要ないでしょう。その定期テストは数III・数Cだったらしいんですね。」
じゃ,そのひとは,あまり勉強せずに,センスのみでオリンピックの問題も解いていると。
「まさにそうですね。センスは抜群です。まあ,他の人もそうですけど。」
受験は大丈夫ですか。もしかしてそのひと,文系?
「いや,確か理系です。受験は何とかなるだろうっていってました。英語や国語で稼ぐからって。」(笑)
代表選手なのに,まるで数学が不得意科目みたいに聞こえてしまいますね。まあ,さすがに色んな意味で豪傑ぞろいですね。

■ 答えが合っているかどうかは自分で判断

  では,最後にお約束というか,後輩のみなさんへ数学の勉強法でアドバイスはありますか?
「そうですね。やっぱり,いろんな問題をじっくり考えることだと思います。1問を1週間とか2週間とか。」
どんな問題をじっくり考えましたか?
「えーと,なかなか急には思い出せませんが・・・たとえば,大数(注:月刊誌,大学への数学)の宿題とかですね。」
ちなみに大数はいつごろから買ってましたか?
「中2のときから毎月買ってます。」
早いですねえ。他にアドバイスは?
「量をこなす必要はないってことでしょうか。あと,模範解答はすぐに見ないこと。」
そうですね。でも,問題をやったら答えがあっているかどうかすぐに見たいっていうひとも多いですよね。
「合っているかどうかを自分で判断できるようにする,ってことが大切だと思います。」
す,素晴らしい!!! まさに,このインタビューの最後を飾るにふさわしい名言です。では,締めくくりに,斎藤君は数学のどんなところに魅力を感じますか?
「(しばらく考えてから)作業を通じて規則を発見し,証明でその正しさを確認できるってところです。」
完璧です。あまりの完璧さに泣けてしまいます。しくしく。では,この辺でお開きとしましょう。

(1999年7月29日 SURにて)

なお,斎藤君に質問のある方や,この企画へのご意見,ご感想などは,トップページの掲示板「数学質問の部屋」までお願いいたします。


SUR
最終更新:2005年5月27日